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パフォーマーとしてのディケンズ: ディケンズの公開朗読について

井原 慶一郎

noteで「パフォーマーとしてのディケンズ: ディケンズの公開朗読について」を公開しました。この記事は、『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』(井原慶一郎編訳、幻戯書房、2019年)所収の「訳者解題」をもとに要約・再構成したものです。詳細は以下をご覧ください。

チャールズ・ディケンズの公開朗読は、1853年の慈善活動として始まり、作家人生の後半における主要な活動へと発展した。プロの朗読家への転向は、経済的必要性、家庭内の不和から生じる精神的苦痛の解消、そして何よりも読者との直接的で「愛情のこもった」関係を求める強い渇望という、複合的な動機によって推進された。

ディケンズは自作を「省略」する手法で朗読台本を作成し、特注の舞台装置と、声色、表情、ジェスチャーを駆使した卓越したパフォーマンスを組み合わせることで、印刷されたテキストに「立体写真」のような生命を吹き込んだ。この活動は商業的に成功を収め、ロンドン、イギリス地方都市、アメリカで常に満員の聴衆を魅了し、彼が遺した総資産の約半分に相当する約4万5千ポンドの収益をもたらした。

しかし、その成功は過労による健康の悪化という大きな代償を伴い、最終的にはドクターストップによってキャリアの終焉を迎える。彼の公開朗読は、作家が自らの作品を声で体現し、読者との間に他に類を見ない親密な関係を築き上げた、文学史におけるユニークな試みであった。

この記事を書いた人

井原 慶一郎

1998年10月、鹿児島大学 法文学部に着任。専門は英文学、表象文化論。主な関心領域は、ディケンズ研究、アン・フリードバーグと視覚文化史を中心としたメディア研究、映画研究。担当講義科目は「芸術文化デザイン論」「アートマネジメント論」(学部)、「比較文学特論」「表象文化特論」(大学院)など。著書に映画学叢書『映画とイデオロギー』(共著、ミネルヴァ書房、2015年)、訳書にアン・フリードバーグ『ヴァーチャル・ウィンドウ/アルベルティからマイクロソフトまで』(共訳、産業図書、2012年)、チャールズ・ディケンズ『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』(編訳、幻戯書房、2019年)、アダム・ネイマン『デヴィッド・フィンチャー マインドゲーム』(DU BOOKS、2023年)などがある。

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