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種分布モデルによる約2万年前における生物分布図の推定

吉田 明弘

最終氷期とは

地球は約10万年間の周期で寒冷な時代(氷期)と温暖な時代(間氷期)を繰り返しています。その中でも,最終氷期とは今から約~1万年前に地球規模で寒冷化が起きた最新の寒冷な時代のことを言います。とくに,2万年前ごろは最終氷期の中でも最も寒冷化した時代であり,最終氷期最寒冷期(LGM)として知られています。

 この時代にはヨーロッパ大陸や北米大陸などは氷床と呼ばれる分厚い氷塊に閉ざされ,海水面は今よりも120mほど低下しており,ユーラシア大陸と北米大陸を隔てるベーリング海は陸橋になっていたと言われています。日本列島には最終氷期の約3~4万年前から人類活動の痕跡が認められようになります。この寒冷な時代には植物種の生育適地に合わせて,その分布域を変化させていました。

モデル研究から過去の生物分布を推定する

最終氷期は約1万年前に終焉し,現在のような温暖な時代になり,それに合わせて植物の生育域も大きく変化させてきました。すなわち,現在の植物分布になったのは,LGM以降の気候変化に伴う植物分布の変化を理解する必要があります。しかし,植物化石は各地にある必ずある訳ではなく,空白域を推測するにはモデルを用いた研究が必要なります。

 私たちの研究では,現在の植物分布を基にして種分布モデル(SDMSpecies Distribution Model)と呼ばれる統計的なモデルを用いて,植物が生育可能な地域を推定します。さらに,気候シミュレーションにより得られたLGMの古気候モデルから,過去の日本列島での植物の好適地を推測しました。まだ,モデルによる仮定になるので,様々な植物化石の証拠と照合しながら,過去の分布域を特定したいと思っています。

スイス・ゴルーナ氷河
SDMを用いて推定した植物A種のLGMの分布域

この記事を書いた人

吉田 明弘

法文学部人文学科多元地域文化コース / 大学院人文社会科学研究科・准教授,博士(理学)。古植生学,第四紀学,自然地理学が専門で,最終氷期以降における植生変遷や気候変動について研究を行っています。地理学は文理融合の総合科学で文系・理系を問わず,様々なジャンルの研究をすることができます。ゼミでは自然地理学や人文地理学,環境地理学など幅広い分野の研究を指導しています。好奇心の旺盛で,アクティブな方にはピッタリの研究分野です!!

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